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xSDG・ラボ、国際連合大学共催シンポジウム
「SDGsとその先のサステナブルな社会へ向けて:グローバルなデジタル社会はどのように変革を加速するのか?」


2025年1月9日(木)

xSDG・ラボ、国際連合大学共催シンポジウム(兼 xSDGコンソーシアム 2024年度第3回xSDGコンソーシアム)
日時:2025年1月9日(木)15:30-17:30
場所:国際連合大学本部 ウ・タント国際会議場

 1月9日に、慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ、コンソーシアムおよび国際連合大学は、シンポジウム「SDGsとその先のサステナブルな社会へ向けて:グローバルなデジタル社会はどのように変革を加速するのか?」(国際交流基金日米グローバル・パートナーシップ強化助成事業、 Sustainable Development Solutions Networks (SDSN) ジャパン協力、外務省、環境省後援)を開催いたしました。

 シンポジウムは、蟹江憲史・慶應義塾大学教授による開会挨拶ではじまり、蟹江教授は挨拶の中で、昨年9月に開催された国連のSummit of the Futureやその成果文書Pact for the Futureの紹介などを行いました。続けてチリツィ・マルワラ国連大学学長兼国連事務次官による基調講演、続けて、蟹江教授のほか、IT、デジタル分野の専門家でもあります村井純・慶應義塾大学教授と、日本マイクロソフト株式会社政策渉外ディレクターの井田充彦氏をパネリストとしてお招きし、国谷裕子慶應義塾大学特別招聘教授のファシリテーションのもと、「グローバルなデジタル社会はどのように変革を加速するのか?」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。

基調講演

 チリツィ・マルワラ学長は「グローバル・デジタル・コンパクトと民間セクター」と題した基調講演で、2024年9月に開催された国連未来サミットでの成果文書「Pact for the Future(未来のための協定)」とその中で採択されたGlobal Digital Compact (グローバル・デジタル・コンパクト)、Declaration for Future Generations(将来世代に関する宣言)について紹介し、コンパクトが採択される過程で6000を越える団体や企業、ステークホルダーが開かれた議論のプロセスに参加したことの意義、またその結果として採択された文書の持つ役割や、国家、市民社会、アカデミア、民間セクターが手を取り合い、このコンパクトにある目的を達成するための努力をしなければいけない、と訴えました。
 グローバル・デジタル・コンパクトの5つの目的(①あらゆるデジタル格差をなくし、SDGsの達成を加速 ②全ての人がデジタル経済に参加し、利益を得られるようにする ③人権を尊重・擁護・促進する、包摂的で開かれた安全でセキュアなデジタル空間を育む ④責任ある公平で相互運用可能なデータガバナンス・アプローチを促進 ⑤人類のためになるような国際的AIガバナンスを向上)のそれぞれの持つ意味、について解説された後、マルワラ学長は、その促進における民間セクターの持つ役割の大きさを強調しました。民間セクターの持つ役割として、
・開発途上国への投資
・能力開発の取り組み
・SDGs促進のためのイノベーション
・国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に従った形での人権の擁護
・グローバル・デジタル・ガバナンス
をあげ、誰一人取り残されないデジタルトランスフォメーションの実現のためには、国や国際機関による取り組みだけではなく、民間セクターの役割、参画が必要不可欠であると訴え、持続可能な開発を実現する上での協力を呼びかけました。

パネル

 基調講演後に行われた座談会では、慶應義塾大学特別招聘教授でジャーナリストの国谷裕子さんモデレートのもと、「SDGsとその先のサステナブルな社会へ向けて:グローバルなデジタル社会はどのように変革を加速するのか」をテーマに、村井純・慶應義塾大学教授、井田充彦・日本マイクロソフト株式会社政策渉外ディレクター、蟹江憲史で、グローバルコンパクトはじめ、SDGs、グローバルな目標の達成のためにデジタル技術、AI技術が果たす役割、実際のデジタル空間がもたらしている問題について、またそのデジタル技術、AI技術に対するガバナンスをどう構築していくか、について、それぞれの視点から議論を交わしました。
 議論の中では、インターネットの多様なアクセスを可能にし、格差を是正するための税制や公平性、情報のアクセスの公平性の重要性が強調されました。
 また、インターネットの教育や経済活動の促進がデジタル化の成功に繋がる一方で、ユーザーのリテラシー向上が重要であり、AIの活用においてもプライバシー問題が指摘されました。ビッグテックの公共性やAIシステムの役割についても触れられ、特にインターネットアクセスの拡大とデジタルインフラの投資、技術的ソリューションと社会的ソリューションの両方が必要であるとの意見が出されました。
 さらには、サイバーセキュリティの国際合意やエシカルな行動の推進が求められる中、技術の進歩に対応するためのオープンな議論の場、またアカデミズム、経済、ユースのそれぞれが持つ役割が重要であり、そのためのグローバルな協力が呼びかけられました。国際合意形成の際に大きな役割を担うとされる国連の役割は規範作りであり、エシックスと重なる部分があるため、2030年以降のグローバルガバナンスの在り方を考える重要性も改めて強調され、SDGsの促進におけるデジタル技術、AI技術などデジタル技術の役割の大きさと同時に、その促進に合わせた社会の変革、全体的なグローバル協力を実現するためのガバナンス構築の重要性についての議論が交わされました。

 最後に、外務省地球規模課題審議官・中村和彦大使による閉会挨拶が行われ、中村大使はSDGsの達成に向けたさまざまな取り組みを有機的に連携させた包括的、統合的に解決できるアプローチの必要性を強調し、またそのためにデジタル技術やAIなどが大きな役割を果たすポテンシャルを持つと話しました。また、国際社会におけるSDGs達成のための日本の貢献や、今後実施予定の自発的国家レビュー(VNR)についても触れ、日本が世界に先駆けて持続可能な社会に向けた取り組みを行い、ビジョンと方法論を示す大切さと、取り組みの前進に向けた決意を述べられました。