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慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ、国連大学主催シンポジウム
「GSDR 2023とSDGs – 2030アジェンダ後半のビジネス変革に向けて」


2024年3月1日(金)

本シンポジウムは終了いたしました。

去る3月1日に、慶應義塾大学SFC研究所xSDGラボ・コンソーシアムおよび国際連合大学は、国際交流基金日米グローバル・パートナーシップ強化助成事業およびSustainable Development Solutions Network Japanとの共催で、シンポジウム「GSDR 2023とSDGs – 2030アジェンダ後半のビジネス変革に向けて」を開催いたしました。

シンポジウムの前半では、チリツィ・マルワラ国連大学学長兼国連事務次官および蟹江憲史慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授より基調講演が行われました。

0301基調講演

チリツィ・マルワラ学長は「持続可能な開発と人口知能(AI)」と題した基調講演で、国連におけるこれまでのAIに係る取り組みについて紹介したうえで、SDGs達成に向けた取り組みに対してAIを含むIT技術の役割や貢献について強調しました。特に、昨年発表された国連の報告書によると、世界全体の水準で評価可能な指標を用いた場合に現時点でSDGs達成に向けて順調に進んでいるものは15%に過ぎず、更なる取り組みの加速や変革が求められるところ、AIを含む科学技術による貢献が重要な役割を果たすことが期待できるとしました。一方で、UNUの研究がもととなったUNESCOの「教育と研究における生成AIの活用に関するガイドライン」において途上国におけるいわゆる「データの貧困」が指摘されているように、AIや科学技術の進展による恩恵を社会全体が平等に受けられるよう努力する必要があると強調しました。また、AIや科学技術を社会に実装し変革を導くうえで企業を含む民間部門の役割が重要であることも強調しました。

0301基調講演

蟹江憲史教授は「ハーフタイム後のゲームチェンジャーを求めて~辺悪へ向けたGSDRからの示唆~」と題した基調講演で、まず筆者として関わった国連持続可能な開発報告書2023(GSDR 2023)を概説し、現在直面している現状についてはコロナ禍、戦争、気候変動の3つの危機によりSDGsの進捗に大幅な遅れが生じていること、特にコロナ禍によりSDGs達成に向けて必要な資金の不足が拡大していることに触れました。その上で、SDGs達成に必要な変革を引き起こすための「Sカーブ」モデルについて紹介し、これらの変革を起こすためには6つの「入口」(ウェルビーイングと能力、持続可能で公正な経済、遺族可能な食料システムと健全な栄養、エネルギーの普遍的アクセスを伴う脱炭素化、都市と郊外の発展、グローバルな環境コモンズ)と5つの「テコ(レバー)」(ガバナンス、経済と資金、個人と集団行動、科学技術、能力構築)が大事であると説明しました。これらの内容を踏まえ、昨年末に行われた国内のSDGs実施指針の改定やそれに向けた市民社会の動きについて触れた上で、現状を打破するゲームチェンジャーの必要性を訴えました。

シンポジウム後半では、蟹江憲史教授のほか、各界のビジネスリーダーである、日本航空株式会社の青木紀将常務執行役員、トヨタ自動車株式会社の大塚友美Chief Sustainability Officer、シティグループ証券株式会社の藏原文秋取締役会長、株式会社リコーの鈴木美佳子コーポレート執行役員をパネリストとしてお招きし、国谷裕子慶應義塾大学特別招聘教授のファシリテーションのもと、パネルディスカッションを行いました。

0301パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、まず冒頭に各社の取り組みや考えに関するプレゼンテーションを受けた上で、国谷裕子教授の進行に基づき変革に向けた取り組みを進める上での課題や教訓などについて議論を交えました。プレゼンテーションで、株式会社リコーの鈴木美佳子氏は、90年代から続く環境経営の考え方が現在も続く自社のESG経営やSDGsに係る取り組みのもととなっていることを強調した上で、これまでの取り組みから得られた経験や教訓を共有しました。日本航空株式会社の青木紀将氏は、航空事業の脱炭素化に向けた取り組みを紹介しながら、他社によって製造された航空機と、同じく他社から仕入れた燃料を使って人と荷物を運ぶ航空事業の特徴に触れ、さまざまな主体間をつなぎパートナーシップを築くことの重要性を強調しました。トヨタ自動車株式会社の大塚友美氏は、「クルマの製造会社」から「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを通じて社会課題の解決に取り組むための体制変化を強調し、具体的な事例として静岡県内で取り組んでいる「Woven City」の事例について紹介しました。シティグループ証券株式会社の藏原文秋氏は、自社の取り組みならずグローバル市場や金融業界全般の取り組みについても触れ、金曜業界全体として環境・社会分野に関するサステナブル・ファイナンスについて2030年までに1兆ドルのファイナンスを実行する目標に対し2020年から2022年までの3年間で約3,485億ドルのファイナンスを実行し順調に進んでいるとしたほか、昨今のESG債については日本でも順調に増えている一方、世界全体においてはまだまだ少ないことを指摘しました。

続いたディスカッションにおいては、事例の発表において提示された取り組みについて深掘りを行ったほか、企業がSDGsやESGに向き合うことで何が変わったかについて問われました。株式会社リコーでは早くから環境経営に取り組んでいたことがESGやSDGsの早期定着につながったことや、ヨーロッパでの市場変化により入札などにおいてもそのような観点について評価されることについて触れ、変革の重要性を強調しました。日本航空株式会社ではESGやSDGsの観点を取り入れた中期計画の策定について触れた上で、コロナ過を経て企業活動と社会との距離を再認識したことが取り組みの促進につながったと説明しました。トヨタ自動車株式会社としては、世の中にはもっと課題があり、SDGsやESGは会社として向かおうとしている方向と合致していて、更なる変革の体制の構築に向けて取り組むとしました。シティグループ証券株式会社としては、「ステークホルダー資本主義」の概念の台頭など市場や社会の変化に触れた上で、イノベーションとそのリスクにおける金融の役割について改めて強調しました。蟹江憲史教授は、これらの取り組みを総括し評価した上で、海外の状況と比較しながら社会の課題を自分ごと化し事業化やビジネスとして取り組む上で更なる行動加速のためには、意思決定の加速と法制化など社会からの後押しの重要性を強調しました。

これらのパネルディスカッションを受け、チリツィ・マルワラ学長は総括として、改めてコロナ禍やコロナ過からの復興によりSDGsに関連する資金のギャップについて触れた上で、バリューチェーンなどにおいていわゆるゲームチェンジャーの役割が大事であると強調し、更に前へ進むための革新の努力を継続する必要があるとしました。